December 25 2024

クリスマスのブランディング

クリスマスはイエス・キリストの誕生日ではない。あくまでも降誕を祝う祭なのだ。誕生日は春だとも夏だとも言われている。この時期のベツレヘムの馬小屋なんて寒すぎて、どうやら生まれた瞬間に凍死するらしい。

ではなぜ降誕祭をこの時期に行うのか?それはキリスト教の世界化のためだと言われている。つまりクリスマスはローマ教会のブランディングの一環なのだ。
もともとキリスト教ができる以前、古代のヨーロッパでは、太陽の力がもっとも弱くなる冬至の期間に、生者の世界に現れた死者の霊に正者が贈り物をするという習慣があった。それにのっかれば救世主・イエスも大衆の間に受け入れられやすくなる。
まさにグレゴリオ聖歌の発明にまさるともおとらない、ローマ教会のすぐれた営業感覚の勝利だと、人類学者の中沢新一氏は言っている。

またクリスマスと言えば、サンタクロースだが、赤い服に白いひげでそりに乗ったあの爺さんも、実は戦後アメリカの資本主義が生んだ偶像のようだ。つまりクリスマスがカトリックのブランディングだとしたら、サンタクロースはプロテスタントのブランディングと言えよう。
そんなサンタクロースはフランスでは異端者として、1951年にディジョンで実際に火あぶりにされている。詳しくはレヴィ=ストロースの「火あぶりにされたサンタクロース」をご精読あれ。人間関係の本質「贈り物」についてクリスマスの観点から描いていて示唆に富んでる。

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December 22 2024

普遍デザイン

ggg(ギンザグラフィックギャラリー)で菊地敦己展。
同世代である菊地さんがおりなす繊細でダイナミックなグラフィックデザインには同業者としてはもちろん、一消費者としてもいつも魅了されてきた。
人間に生得的に備わっている言語に関する知識のことを普遍文法というが、菊地さんのデザインは普遍デザインとして、潜在的感性を心地よく刺激してくれる。

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December 15 2024

ルイーズ・ブルジョワのアンビバレント

森美術館でルイーズ・ブルジョワ展。
久しぶりに魂の叫びを感じる作家に出会った。
中山美穂の2、3日心がえぐられて、とは言い得て妙。
人間の中の地獄、地獄の中の人間。
アンビバレントこそ人生最難関のテーマかもしれない。
ただその地獄も素晴らしい所、と言うのが望みでもある。

展覧会観覧の際は、くれぐれもご注意を!

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December 7 2024

安部公房と鯨

県立神奈川近代文学館で安部公房展。サブタイトルは21世紀文学の基軸。
安部公房は現実を高く越えていくシュルレアリスムではなく、現実の底を潜り抜けていくサブレアリズムを標榜していた。作品では科学と非科学もしくは宗教、現実と非現実もしくは異界の世界を行ったり来たりする。つまり「あわい」を描いた作品が多く、ふと気を抜くと自分がいったいどの世界、どの次元にいるのか一瞬戸惑う。

あえて個を部品化する匿名性を題材にすることで、個人を個人として輪郭づけるアイデンティティの涵養を促すメッセージが要所要所に伺える。まさに言葉というフォルムを用いてデザインしているかのようだ。

また科学と宗教と人間を結ぶ思想と世界観を童話として形にした宮沢賢治の世界と通底しており、すべてが心理劇に収斂していく日本文学の伝統を嫌っていた点や感情を排除し客観データを使って感覚的な表現も通奏低音のように響いてくる。
公房の娘・ねりさんの名前は宮沢賢治の小説「グスコーブドリの伝記」のブドリの妹・ネリに由来するのも遠因であろうか。

そして集団行動の危うさも指摘している。例外行動をする者を非人間的だとみなすのは、その例外行動が高い頭脳を持ち得た人間のあまりにも人間的な行為であるから、非人間的なものとして抑圧しているに過ぎない。
鯨はしばしば集団自殺する。比較的高い知能を持った鯨が、である。原因は諸説あるようだが、人間だって鯨のような死に方をしないという保証はどこにもない。

開催は明日8日まで。

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December 4 2024

福武教育文化振興財団 教育文化活動助成

この物体はいったいなんだろう?
種のようでもあるし、フィールドのようでもあるし、池にも見えるし、なんでもないようにも見えるし。

いろんなこと考えて、いろんな見方ができると、今がきっともっと楽しいよ。
そういうのを創造って言うんだね。

岡山での創造をきっともっと楽しく。

福武教育文化振興財団2025年度『教育文化活動助成』の申請受付が始まりました!今年もデザインを担当させていただきました。

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December 2 2024

金閣の本当の美とは

はや数年前の事。三島由紀夫の描く美的絶対者である理想的に肥大した「心象の金閣」とやらを拝謁すべくやってきたのだが・・・。「現実の金閣」はおろか、「超現実的な金閣」にお目通りできた。
林養賢が臨済宗相国寺派大本山相国寺の境外塔頭である鹿苑寺、通称金閣寺に火を放って74年、小説「金閣寺」起筆から69年、そして三島の割腹自決から今日で54年。享年45歳。

三島は軍国主義者で、最期の印象から暴力的な極右だと思われているのも仕方ないが、実は矛盾の糊塗、自己の保身、権力欲、偽善に覆いつくされた政治家の欺瞞とその政治家に操られる自衛隊、そしてそれを看過している日本国と国民を憂えていたに過ぎないのではなかろうか。
本質は連綿と続いてきた日本の歴史、文化、思想、伝統を守ること、ナショナリズムではなく、パトリオティズム。つまり政府を愛するのでなく、日本という国そのものを愛すること。

人間の理想は何故かいつも美しい。しかし現実はどうだろうか?「金閣寺」の中で溝口は、この世で一番美しいと教えらえた金閣を最初に目にしたとき「美というものは、こんなにも美しくないものだろうか」と考え、鳳凰も鴉にしか見えなかった。しかしそれが真の金閣の姿であり、人間の理想に対する醇化な答えではないだろうか。
故に今回観た金閣は現実を保守するための現実、超現実的な金閣であり、これはこれで大変示唆深い。今の世の中、他人に理想を求めすぎているのかもしれない。

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2024.9-11
2024.7-8
2024.5-6
2024.3-4
2024.1-2
2023.12
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