QUA DESIGN style
岡山後楽園門前町 出石町

岡山後楽園門前町 出石町

岡山市北区出石町の町のロゴマーク=町紋をデザインした。現時点では非公式ではあるが、出石町の主に商店の経営者で構成されたまちづくり任意団体・出石小道(代表・御領園美耶子氏)とともに取り組んだ。 出石町は日本三名園の一つ岡山後楽園の門前町であり、大正時代や昭和初期の和洋混在のレトロな建物が建ち並ぶヴィンテージな町である。また岡山城などの名勝史跡や県立美術館、博物館、夢二郷土美術館などの文化施設からも程近く、画家・国吉康雄の生誕地でもある。 町紋は出石町町域の一部をモチーフに、「出石」という漢字を表現している。国吉康雄の絵画から着想した多色の色使いは、町のにぎわいや住宅と商店、和洋風の建物などが混在している様子を表した。

町紋の狙いは二つある。一つは自分の住む町に対して愛着を感じ、誇りを持ってもらい、出石町が一つにまとまること。町紋は家で言えばいわば家紋と同じある。家紋は平安時代に自分の牛車に家のしるしとして、鎌倉時代からは合戦の時の敵味方の区別をつけるために旗印として使われていた。つまり自分の所有財産や帰属意識の証として使われている。町紋があることで、この街は自分の街であり、自分はこの街の住民である、ということを一人ひとりが排他的でなく誇りを持ち、自覚するだけで街の秩序や文化力は向上するのではないだろうか?また町紋という旗印の下、「出石町」として一体となって発信していくことで、より強固な発信力となるのではないだろうか?

二つ目は出石町の魅力をより多くの人に伝え、来訪してもらうきっかづくりだ。町の価値や潜在性を視覚的に表現できるマークがあることで、広報活動がしやすくなる。今回町紋と合わせて出石町界隈のお店などを掲載したまちあるきマップやポスター、ステーショナリー、缶バッジ、ラック、提灯なども製作した。それぞれに町紋をあしらうことで独自性や統一感も出て認識してもらいやすくなり、ブランドイメージの向上に繋がる。

これら二つが有機的に結びつけば、住民の間でも社会的にも出石町の価値を共有することができる。ビジュアルデザインの効力は見た目や形をきれいにできるだけではなく、人の心までもつなぐ(共有する)ことができる点にある。これは建築や土木主体で論じられてきた従来の都市計画に欠如していた点ではなかろうか。デザインで都市に魂(感情)を入れる。都市計画は量的な解析やサイエンスだけで論じてはいけない。住民の質と社会的な評価が上がれば、景観やコミュニティはおのずと良くなり都市としての質は上がる。そして出石町のように小さな町単位で質を上げていけばその集合体である県や国の質も向上する。持続可能でもあるこの図式こそが今後の都市計画に不可欠な概念ではないだろうか。先号でも述べたが私は都市計画の一環としてデザインの仕事を始めた。前職は都市計画コンサルタントであるため、一朝一夕に成果が出ないことは承知している。この出石町もまだ道半ばである。都市というやっかいな生き物とこれからも対峙を続けたい。

クライアント/出石小道 マップデザイン/CIFAKA,inc. スタンドサインデザイン/盛田健(盛田建築製作一級建築士事務所)